山口県・長門市・金子みすゞ記念館は、金子みすゞの生家が記念館になっている場所です。金子みすゞが暮らしていた当時の様子が再現されている家と、展示館に分かれています。
金子みすゞの名前は知っていますが、なぜ有名なのか、どんな功績を残したのか全く知りませんでした。が、彼女が世に知れ渡るようになるまでのストーリーがホントに感動します。
まず入口ですが、生家を忠実に再現しすぎて、看板が「金子文英堂」となっているため、記念館がここでいいのか迷います。金子みすゞの実家は書店だったためこのような看板になっています。中に入ると書店の中に居住スペースがあるという作りになっていますね。大正時代の書店は趣があっていい感じで、良い写真が撮れそうなのですが残念ながら撮影禁止です。
↑撮影禁止なので絵で。
二階にはみすゞの部屋が再現されていて、みすゞがここで詩を書いたであろう風景がうかびます。
↑みすゞの部屋
見学をしていると生家のあちこちにみすゞの詩が展示してあるのがわかります。庭なら庭を、風呂場なら風呂場をテーマにした詩が展示してあり、金子みすゞの世界に入り込みやすいです。こういう所が良くできてるなーと思います。
中でも一番心に残った詩が、台所近くにあった「お菓子」という詩。
いたづらに一つかくした弟のお菓子。たべるもんかと思つてて、たべてしまつた、一つお菓子。
で始まり、最後は以下で終わります。
にがいお菓子、かなしいお菓子。
子供心の罪悪感がすごく分かり、この詩一つで金子みすゞの性格が表されている気がしました。金子みすゞたぶんいいヤツ。
庭へ進み、庭の奥へ進むと金子みすゞの生涯が紹介されている建物へ行けます。この金子みすゞの生涯、ラストが泣けます。正確に言うとラストとその50年後が泣けます。
金子みすゞの生涯を見ると、幼少時代に父の死や母の再婚があるものの、基本的に幸せそうに感じました。結婚するまでは。
幼少時代の先生や友達のコメントを読むと、金子みすゞは美人で成績優秀。家も貧しいわけでもなく明るくみんなの中心的な人だったそうです。こういう美談は読んでいて気持ちが良いです。高校を卒業した後に詩や童話を投稿して、それがすごく評価されたり、同じ山口県の偉人種田山頭火とはえらい違いです。
しかし、結婚してからは夫から詩の投稿を禁止されたり暴力を振るわれたりと、幸せに陰りが見えはじめます。このあたりからパネルの展示を読んでいてツライです。
そして最終的に離婚。その直後に26才の若さでこの世を去ります。展示の説明では死因について直接ふれていませんでしたが、自ら命を絶ちました。最初は離婚等ツライ事に耐えられないため死を選んだのだと思いました。が、実際の理由は娘の親権を最低な夫に渡したくないため、命を掛けて親権を実母に託したそうです。現在では親権が母親に行くケースが多いですが、昔は父親に行くケースが多かったのだそう。親権を託すといっても遺書に嘆願の言葉を残しただけなので法的な力はありませんが、この死と引き換えに残した願いは周囲を動かし、みすゞの望み通り一人娘は実母に育てられることとなります。
ここで詩人金子みすゞの生涯は終わり、周囲からみすゞの名と詩が忘れられていきます。が、約50年後、日本中に金子みすゞの名が知れ渡る事となります。
時は流れて1966年。詩人の矢崎節夫さんが、偶然見つけた金子みすゞの一つの詩「大漁」に衝撃を受け、金子みすゞの作品を探し始めます。その後長い時間をかけて金子みすゞの残した作品が発見され、1983年に発売された詩集により、全国に金子みすゞの名が知れ渡ります。
私たち若い世代でも金子みすゞを知っているのは、国語の教科書にも詩が載っているからでしょうか。教科書に載っていた「みんな違って、みんないい」は、当時読んだときは単純に「良いこというなー」という感じでしたが、今読むとリズムの良さや、良いことをいってるけど気取ってない感じがやっぱりすごいんだろうなと思います。
幸せな幼少時代を過ごし、詩を出したら高評価を受けて期待の若手新人。結婚後は不幸続きで最後は26才で自らの命を絶つ。そして50年後に詩と名が知れ渡る・・・これドラマ化できるでしょ・・・。ノンフィクションでここまでストーリー性のある生涯なかなか無いでしょ。と思ったらすでにNHKでドラマ化されてました。てゆうか映画化もされてました。全然知りませんでした。
金子みすゞという名前を知っているから寄っただけでしたが、ここまで感動すると思いませんでした。やっぱりこうゆう悲劇的な話が入ると心が揺さぶられるのはなぜでしょうかね。人間のサガでしょうか。これで350円。お得すぎる。
ちなみに、金子みすゞ記念館周辺は金子みすゞが育った場所ということで、詩の中に登場する店も残っているので散歩するのも楽しいと思います。
おすすめ度10(10点中)・・・大正時代の趣がある生家、心に染みる詩、ドラマチックな生涯。ホントに来て良かったです。
参考URL:金子みすゞ記念館
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